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- 「本文はじめ」を全面改筆しました(最近オーストラリアに長く行っており6州のうち4州をレンタカーでドライブして食文化を観察してきました!)。
【基礎情報】
国名:オーストラリア連邦、Commonwealth of Australia、首都:キャンベラ(最大都市:シドニー)、ISO3166-1国コード:AU/AUS、独立国(1788年英国より)、公用語:なし(実質的な公用語:英語)、通貨:オーストラリアドル。
オーストラリアに公用語がない
【地図】
オーストラリアは南半球の大陸で、東にはニュージーランドやニューカレドニア、北にはパプアニューギニア、インドネシア、東チモールがあります。
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◆広大な国で英国系の人々が受け継ぐ料理と、世界からの食の流入
オーストラリアは世界最小の大陸です(世界最大の島ではないと言う意味です)。オーストラリアは大陸を1つの国で占める世界唯一の国。18世紀以降の英国系植民が開拓者で、有色人種の排斥政策を70年くらい続けてて、正式に白豪主義を廃止したのが50年前。資源が出る先進国で超好景気で裕福ということもあって、この50年で、今どきのオージーたちはアジアをはじめ世界の美食の味に慣れて育ってきました。でも田舎に行くと言うほどアジアの影がない。田舎に行っても(つまりどこに行っても)必ず存在する普遍的な料理が真のオージー料理と言うのなら、その筆頭は、英国系の人々が受け継いできた料理です。バーベキューとかミートパイ系の惣菜とかチップス(フライドポテト)とか。
どんな小さな町にも無料で使える公共バーベキュー台がある。すごい!(撮影地ケアンズ)
人類はアフリカで発祥し、ユーラシア大陸に進出し、5万年前(議論あり)にオーストラリアに到着。よく聞く「アボリジニー」とはここで5万年かけて発達した約700の黒人先住民族群を総称する呼称です。そう。アボリジニーって1つじゃないんです。
英国は、産業革命以後急速な発展の頃、国内では犯罪者が増加。政府は、囚人を国内に置きたくなくて島流し(というか大陸流し)していました。しかし主要な囚人流刑先だったアメリカに独立され(1776年)、巨大流刑地を失った英国政府は新たな流刑先としてオーストラリアを指定します。それが、5万年のアボリジニーの伝統を打ち壊す悲惨な契機となります。さっそくファーストフリート(The First Fleet;初の植民船団)が入港(1788年)し、以後、船でやってきた囚人や役人らがオーストラリアの初期の植民者となります。なお「英国」の範囲は時代によって違い、オーストラリア流刑囚人たちの出身はおよそ2/3がイングランド、およそ1/3がアイルランドで、まとめて「アングロケルト系」とも呼ばれます。
植民者は開拓者となり、先住民を無視して国土を土地譲渡に割り当てていった。先住のアボリジニーは人間とみなされず動物と同じで狩られていった。アボリジニーの人口は激減し、やがてエマンシピスト(刑期を終えた囚人)や一般人入植者(自由移民)も増え、彼らは労働力になり、大農園や街が次々にできていく。もう単なる囚人の国ではない。1851年からのゴールドラッシュ時代は人口が急増し、アングロケルト人を主体に、エスニック(ドイツ人など他のヨーロッパ白人)と中国人が大量に流入してきました。しかし肌の色も文化も習慣も違う中国人の増加は白人にとって煙たい問題だったので1901年から白人主義政策が開始され、有色人種の移入を制限し、国内を白一色にしようとしていきます。
第二次世界大戦で国づくりにしても国防にしても「人口を増やさないと国が亡びる」と思い悟ったオーストラリア政府は欧州各国と協定を結んで移民の大量受け入れ開始。「白人ウェルカム」のオーストラリアは欧州の敗戦国の住民にとっては希望の光が見える国だったのですね。戦争で負けた国は国内も荒れて悲惨ですから、それがイタリア人大量流入の背景です。近年に白豪主義が廃止されると(1973年)いよいよアジアからの移民が増加。アジアは21世紀最大の移民源です。今ではシドニーやメルボルンなどの大都会を歩くと大勢のアジア人を見かけるほどです。
2023年の人口は2600万人、人口密度は日本の1/100以下。祖先の出身調査では英国系が8割(※)、少数派として中国、イタリア、ドイツ、その他と続きます。アボリジニーはより少数です。こうやって歴史と数字を理解すると、今のオーストラリア料理を知る基礎知識が出来てきます。
※2021年国勢調査でイングランド(33%)、オーストラリア(29.9%、ただしこのほとんどがアングロケルト系)、アイルランド(9.5%)、スコットランド(8.6%)、中国(5.5%)、イタリア(4.4%)、ドイツ(4%)、アボリジニー(2.9%)。
本題、「オーストラリア料理とは。」
オーストラリア料理の主軸をなすのは、英国系の人々がこの地で受け継いできた料理です。とにもかくにもそれはバーベキュー(牛肉・羊肉やソーセージ類の鉄板焼き)。そしてパイ(パイ生地で具を閉じ込めて焼くもの)、チップス(フライドポテト)、それからトースト(焼いた食パン)やサンドイッチ(食パンに具を挟む)、コールスロー(千切りキャベツとにんじんのマヨネーズ和え)、ティー(紅茶)、ワイン、揚げ物各種(フィッシュアンドチップス(魚のフライとフライドポテトのセット)やチコロール(野菜巻き揚げ)等)。次にエスニック白人(英国系以外の欧州白人)がもたらした白人料理。これにはエスプレッソマシンで淹れるイタリア風のコーヒー類や美味しいパスタ、ドイツ風のシュニッツェル(薄切り肉のカツ)にソーセージ類。それから動物狩りを是としてきた人々なのでブッシュタッカー(アボリジニーの食)としてカンガルー肉なども。・・・こんなところまでは、人が少ししか住まない田舎でも食べられている、真のオーストラリア料理だと私は思っています。
ネットを見ると「オーストラリアは移民の国だからアジア料理もいっぱい」みたく書かれているけれど、それはオーストラリア料理の最重要事項じゃない。都市圏や巨大スーパーマーケットなら中国料理や寿司も手に入るけれど、アジア人やアジア料理を見かけない町だってたくさんあるんです。でも、人が少なすぎて村にすらなれないようなところでも、ガソリンスタンドレベルのショップでイタリア風のコーヒーやパイや揚げ物を売っている。どんなに小さな村でも公園には無料で使えるバーベキュー台がある。オーストラリア料理としてまず語るべきものは彼らが国中どこにいても食べているような料理、すなわち英国系の人々がこの地で受け継いできた料理と、白人料理なのです。
開拓者の大農場で育まれる美味しいお肉や乳製品がいっぱいありますよ。熱帯のトロピカルフルーツあり、温帯の美味しい野菜あり、やや乾燥地のワインは絶品。揚げ物が美味しくてオージー味は悪くない。もしオージー味に飽きても美味しいケバブ(トルコ味の焼肉サンド)はじめ多彩なアジア料理がある。オーストラリアにいるとどうも太っちゃうけど(実際肥満者が多い国だけど)健康意識が高い国なのでヘルシー食材もいっぱい。資源が出る先進国は今や超好景気で国が裕福で物価が高くて(テイクアウェイの軽食1人分が2000円とかする)おののきますが、そこさえ克服すればオーストラリアは食を楽しめるいい国です。
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肉のおかず Meat
「オージービーフ」の「オージー」はオーストラリアの愛称です。そのオージービーフのイメージ通り、オーストラリアでは牛肉料理は日々の基本的な料理です。ビーフステーキ/ステーキ(肉の厚焼き)やバービー(バーベキュー)のほか、ミートパイ(ひき肉炒めが入ったパイ)やシェパーズパイ(ひき肉炒めとマッシュポテトの重ね焼き)なども定番です。
広大なオーストラリアは荒野すなわち「アウトバック」が多く、アウトバックで生活を営んできた先住民アボリジニーの食、すなわちブッシュタッカーは、白人層にもある程度受け入れられており、都市のスーパーでもブッシュの肉が手に入ります。
ルーミート(カンガルー肉)、カンガバンガス(カンガルー肉のソーセージ)、エミューミート(巨鳥の肉)は外国人に珍しがられて外国人受けする肉なので、どちらかというと観光客が集まる店やキャンプサイトで焼かれていることが多い印象ですが、家庭料理にも登場します。脂肪分が少ないのでヘルシー志向の人に好まれています。
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バービー・バーベキュー Berbie, BBQ
オーストラリア人の食文化に、バービー(バーベキュー)は欠かせない。私のケアンズでの出来事なのですけれど、いろいろな公園にガスや水道つきの無料のバーベキュースペースが設置されていて驚きました。仲間同士でパンや肉類やドリンクを持参して公園に集まり、パンをトーストし、肉を焼き、ドリンクを交わしながらわいわいとバービーを楽しむのです。これは白人入植者がこの土地にやってきたときから、天気の良い日には屋外で食事をしていた名残りです。庭にバーベキューセットがある家庭も多いです。
バービーの定番は、チョップ(トンカツ用肉のような厚さの骨付き肉)やスナッグ(ソーセージ)です。「snag」は辞書をひくと障害物という意味ですがオージー英語ではソーセージを意味します。同時にパンを焼いて、パンに焼けた肉を挟んで、いただきます。
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ブッシュタッカー Bush tucker
「ブッシュタッカー」はオーストラリアのネイティブフードで、オーストラリアの低木地帯(ブッシュ)の食べ物(タッカー)を指し、数百種類の野生の動植物が該当します。オーストラリア先住民の主たる食糧として歴史は長いのですが、おそらく最も有名なものは近代に商業的に成功したマカダミアナッツで、ハワイに移植されて莫大な収益産業に発達しました。オーストラリアのブッシュタッカーにはルー(カンガルー)やエミュー(巨鳥)などの動物、フィンガーライムやライベリーなどの野生果物、川魚などがあり、都市のスーパーでも売られているものもあります。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary
【肉の料理、バーベキュー】
- エミューミート(emu meat):巨鳥の肉
- カンガバンガス(kanga bangas):カンガルー肉ソーセージ
- シェパーズパイ(Shepherd’s pie):ひき肉炒めとマッシュポテトの重ね焼き
- ケバブ(Kebab):トルコ味の焼肉サンド
- シュニッツェル(Schnitzel):薄切り肉のカツ
- ステーキ(Steak):ステーキ、肉の厚焼き
- ビーフステーキ(Beef stakes):牛肉ステーキ
- スナッグ(Snag):ソーセージ
- チョップ(Chop):トンカツ用肉のような厚さの骨付き肉
- バービー(Berbie):バーベキュー
- バーベキュー(Barbecue、BBQ):肉類の鉄板焼き
- ミートパイ(Meat pie):ひき肉炒めが入ったパイ
- ルーミート(Roo meat):カンガルー肉
【魚の料理】
- フィッシュアンドチップス(Fish and chips):魚のフライとフライドポテトのセット
【小麦の料理】
- サンドイッチ(Sandwich):食パンに具を挟むもの
- トースト(Toast):焼いた食パン
- パイ(Pie):パイ生地に具を包んで焼くもの
【イモや野菜の料理】
- コールスロー(Coleslaw):千切りキャベツのマヨネーズ和え
- チコロール(Chiko roll):野菜巻き揚げ
- チップス(Chips):フライドポテト
【飲み物】
- ティー(Tea):紅茶
- ワイン(Wine):ブドウのお酒
【その他】
- ブッシュタッカー(Bush tucker):野生の食材の総称