タフチェグラフチェ

タフチェグラフチェ

世の中には「国としてのマケドニア」と「地理上のマケドニア地方」というのがあって、後者はギリシャ国内のマケドニア(いわゆるエーゲ海マケドニア)、ブルガリア国内のマケドニア(いわゆるピリンマケドニア)、そして北マケドニアにほぼ一致するバルダルマケドニアという3地域に大別できます。北マケドニアがマケドニアという国名だった頃はそれでギリシャにいじめられてNATO加盟を阻害されていたりした、ナンテいう話にもつながる基礎事項ですね。で、北マケドニアのアルバニア人地域の名物料理が今や北マケドニアの国民食の地位を獲得! そしてアルバニア人が主要民族であるアルバニアやコソボでも生活に根付く大事な料理。それがタフチェグラフチェです。赤いのはトマトではなくてたっぷり加えたパプリカパウダーですから、ハンガリーのグヤーシュを思い出す料理ですね。ほっくほっくの豆が、ナチュラルな甘みをもつパプリカパウダーと絡まって味わい優しく、ベジタリアン料理なのに食べ応え満点。見てこの赤いきれいな色! これがトマトの赤ではないだなんて、食してみる価値ありの料理です。

材料

4人分):

白いんげん豆(※1)
300 mL(※1)
玉ねぎ
1個
にんにく
6かけ
野菜コンソメの素(※2)
小1
ベイリーフ
2枚
鷹の爪(※3)
2本
オリーブオイル
大3
パプリカパウダー
大1
薄力粉
大1/2
小1/2
こしょう
小1/2
生ミント(※4)
刻んで大3(※4)
  • ※1:白いんげん豆は中東料理のファスーリャなどの名前で売られているものです。日本の豆であれば大福豆などが該当します。またオーブン耐熱皿の内容積により豆の使用量が変わるので下のコツ欄を参照して事前に計算し、過不足なく用意するとよいです。
  • ※2:野菜コンソメの素がない場合は、肉系のコンソメの素などで代用します。
  • ※3:鷹の爪は現地の乾燥唐辛子の代用です。韓国産唐辛子のように大きいサイズの乾燥品があるとよいです。
  • ※4:生ミントがない場合は乾燥ミントを好みの量で代用します。

調理時間

(豆を水に浸ける時間を除く)

作り方

  1. <前日>白いんげん豆をたっぷりの水に浸けて1晩置いておく。
  2. <当日>白いんげん豆を新しい水に入れて30分煮て、水を替えて10分(または完全に柔らかくなるまで)煮る。
  3. その間に玉ねぎとにんにくをみじん切りにする。
  4. 白いんげん豆の煮汁を捨て、豆を鍋に戻し、新しい水を400 mL入れ、玉ねぎとにんにくの半量、野菜コンソメの素、ベイリーフ、鷹の爪を入れて中火にかけ、沸騰したら弱火にしてしばらく煮る。
  5. その間に小さなフライパンにオリーブオイルを入れて中火で熱し、玉ねぎとにんにくの残りの半量を入れ、茶色くなり始めるまで炒める。
  6. 炒めている間にパプリカパウダー、薄力粉、塩、こしょうを量って小皿に入れてミックスしておく。
  7. 玉ねぎとにんにくが色づき始めたら、パプリカパウダーミックスを加えて素早く均一に混ぜ、全体に油が絡まってペースト状になったら、豆の鍋から鷹の爪とベイリーフを取り出し、パプリカペーストを豆の鍋に入れる。
  8. 豆の鍋を混ぜ、味見をして塩加減やパプリカ加減などを好みに調えて火を止める。
  9. (ミントが生の場合はみじん切りにする。)
  10. オーブンを220℃に予熱開始。
  11. オーブン耐熱容器に豆を入れ、豆の表面がようやく隠れるくらいに煮汁を入れ、表面にミントを散らし、スプーンでミントの上に煮汁をかぶせ、中央に鷹の爪を乗せ、220℃のオーブンで30分(または煮汁が減って豆の表面が出てくるまで)焼く。※鷹の爪が焼けて黒くなってきたらひっくり返す。
  12. Enjoy!

材料と調理のこつ

  • 器のサイズと豆の量のバランスがあまりに崩れると見た目が良くないので、器の上のほうまで豆が入るようにするとよいです。私の計量では、白豆乾燥時に300 mL=240 gで、2度ゆで終わったとき体積が乾燥時の2.6~2.7倍=およそ800 mLになりました。ここに玉ねぎなどの具が入り、オーブンで焼く前は煮汁の水面が豆以上の高さになるので器は950 mL~1000 mLは必要です(写真の器は480 mL、これを2つ使った)。【簡単まとめ】まずオーブン用の容器を決め、その内容積を量り、豆の体積(乾燥時)はオーブン容器の内容積の約30%(=300/950)あるいはそれより若干少ない程度とし、豆の量に合わせて調味料の量を変える。
  • 豆の漬け汁や煮汁を替えて2度ゆでするのは、豆の成分を落とすことで鼓腸(こちょう;豆などが原因でお腹にガスがたまって張る現象)を防ぐためだと言われています。
  • 辛いものが苦手な場合は鷹の爪を省いてよいですが、少々辛い風味がないと味わいがぼやけるので、煮る時間を短くするなどして、ある程度は風味を得るように調整します。
  • 野菜コンソメの素は現地のベゲタの代用です。ない場合は肉系のコンソメの素などで代用することになりますが、この料理は菜食の場でも出されるものなので、野菜コンソメの素を使うとよいです。
  • この料理は菜食の場でも出される料理なので、基本的には肉類が入りません。ただし好みでソーセージを乗せるレシピもあります。
  • スプーンでミントの上に煮汁をかぶせる理由は、ミントがオーブンで焦げないようにするためです。ドライミントを使う場合は特に必要な作業です。
  • オーブンで焼くとミントの香りはかなり飛ぶので、ミントが多く入ってもよいです。
  • 水分が残ってしっとりするように、しかし水っぽくならないように作ります。よってオーブンで焼く間も、カラカラにならないように注意します。
  • 現地では素焼き色の浅型土器を使いますが、日本ではそのような食器は入手しにくいので、せめて陶器を使うとよいです(金属やガラスではなく)。

Tips about cuisine

  • 「タフチェグラフチェ」のアルバニア語(アルバニア、コソボの公用語、北マケドニアのアルバニア人人口比率が高い州の州公用語)の綴りは「Tavçe grafçe」。
  • 「Tavçe」(タフチェ)は皿(伝統的には陶器の焼き物の器、キャセロール)を意味する「タワ」に由来し、「Grafçe」(グラフチェ)は白いんげん豆を意味する「グラフ」に由来する。よって「Tavçe grafçe」(タフチェグラフチェ)は「白いんげん豆のキャセロール焼き」のような意味をもつ。
  • タフチェグラフチェは北マケドニア北西部の都市テトボの名物料理とされる。テトボは北マケドニア・コソボ・アルバニアの三国国境に近い街で、アルバニア人が人口の過半数を占める街である。
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