ムブティピグミーが食べているイモの種類が分かった!

2020/03/23

この記事では、以前、コンゴ(旧ザイール)でピグミー村を探し当て、そこで彼らが食べていたイモの種類を遅れて突き止めたことについて、その検証の過程を記載します。

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いわゆるピグミーとは、低身長の系統の人々を指す用語です。アフリカには13~15の部族に分かれ、うちムブティはコンゴ東北部のイトゥリ地方の熱帯雨林に居住します。私は兼ねてから「イトゥリの森」に行きたくて、この、どこにあるかも分からないピグミーの村を目指しました。当時のコンゴ東部は反政府軍と政府軍の戦闘地域だったのですが、憧れは止まなくて、だから、タンザニアのキゴマのコンゴ領事館(そこでコンゴビザを取得した)、それから現地では駐留軍人や地元民に最新の情報を確認しながらの渡航でした。

乗り合いバスの中で知り合ったベルナデットおばさん。ベニにあるおばさんの家でホームステイをすることになり、おばさんの家族が車を出してくれて、ムブティピグミーの住まいを探してくれることになった。旅の奇跡が次々にやってきます。そして私は地図にない村に、森をかきわけて入った先に、ついにたどりついたのです!!

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このピグミーは大人の身長が110~140㎝ほど。調理をしている鍋を見ると、マラギ(煮豆)やソンベ(キャッサバの葉のどろどろ煮)、そして、イモをゆでていました。

ムブティ

↓イモ。

ムブティ

今更になって、反省。このときイモの種類まで確認できなかった。・・・しかし、今からでも不可能ではないのなら、知りたい!! 現地での呼称も知りたい!!

ということで、イモの種類と現地の呼称の検証が始まったのです。

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1)現地の通用語はナンデ語とスワヒリ語
このピグミーの集落の場所は北キブ州の北部。ホームステイをしたベニと同じく、ナンデ族の人が多い地域で、現地ではナンデ語がよく通じていました(私たちを連れていってくれた人とムブティはナンデ語で会話ができていたようです)。もちろんこの地域の共通語といえるスワヒリ語も、ムブティは使えるようでした。

2)日本の専門家に質問
実際にお会いしたことのある、アフリカの食材の権威の先生や先住民文化の権威の先生にこのイモの写真を見ていただき名称を伺いました。しかし両先生ともこのムブティ地域とは離れた場所での研究をなさっているためか、お二人の回答は異なりました。

3)地元の人に質問
ホームステイした家の息子のキク君とネットで連絡が取れました。この写真を見てもらいました。私はスワヒリ語ができないので、ビギナーレベルのフランス語で頑張ります。コンゴ民主共和国の公用語はフランス語であり、ある程度の学校教育を受けている人はフランス語の読み書きができます。よって、キク君と意思疎通する方法はフランス語しかないのです。

あづさ「Ces photos sont prises sur le site Pygmée entre Beni et Bunia. Connaissez-vous le nom de cette aliment? Taro? Yam? Manioc? Macabo? autre?」(この写真はあなたの家のちょい北方にあるピグミー村で撮ったんですが、イモの名前をご存知ですか? タロ?ヤム?キャッサバ?マカボ?それとも?)
キク君「Cette aliment c’est le Taro.」(これはタロだよ。)
あづさ「Comment appeler le Taro dans votre langue?」(タロイモは、あなたの民族の言葉では何て呼ぶの?)
キク君「En swahili c’est le “mahole” et en nande c’est le “mambohu”.」(スワヒリ語ではマオーレと言い、ナンデ語ではマンボゥと言うよ。)
あづさ「Merci beaucoup!!」(ありがとう!!)

4)「Mahole」の発音検証
「Mahole」の発音を動画で見つけました。
Mapishi ya mahole/Magimbi/It’sAngy lifestyle(≫こちら

マオーレ

0:11 マオーレ

5)「Mambohu」の発音検証
「循環と共存の森から」は、ムブティピグミーの生活について記録された書籍です。

ムブティ

文中、ムブティが食べるイモの名称の現地語の記録として「マンボゥ」の記載があります(※)。

※書籍のムブティ集落は私が訪問した場所ではなく、現地語もナンデ語とは異なる言語であるが、同じ単語を共通して使うことに疑問はない。

6)スワヒリ語辞書
「Dictionnaire swahili-français」(≫こちら

マオーレ

マオーレはタロイモであると記載されている。

7)Wikipedia「タロイモ」(≫こちら
「タロイモは、サトイモ科の植物のうち、根茎を食用とするために栽培されている栽培種の総称である。」
「アフリカの熱帯雨林地帯ではさらに多くの種や、その品種群が多く栽培されている。」

つまり、タロイモは厳密に1つの品種をさす用語ではなく、サトイモ類を総称する用語です。日本人にとってのじゃがいもと同じです。広義にはじゃがいもであっても、品種は男爵だったりメークインだったりする。でも食材の認識としてはじゃがいもで良い。今日は、最初私がキク君に質問したような、ヤムイモなのかマニオク(キャッサバ)なのか、タロなのか。その答えが出たのですから、目的は達成です。

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【結論】
私がムブティの居住地に訪問したとき、彼らはタロイモを調理していた。狭い範囲ではマンボゥと呼ばれ、スワヒリ語圏広域ではマオーレと呼ばれることが分かった。

アフリカでイモの記憶といえば、まっさきにマニオク(キャッサバ)が思いつくほどマニオク優位なので、こうしてタロイモが食べられていることも知ることができて、大変に良い勉強になりました。



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